ひとりカフェごっこ

ひとりカフェごっこ

私はよく、カフェごっこをします。

もともと運動選手だった私にとって、
食事とは、動物に与えられる餌や
自動車にとってのガソリンと同じ。

動くために必要なもので、
楽しむものではありませんでした。

味や見た目よりもカロリーを優先するため
ゼリー状のパワードリンクを摂取したり、
歯ごたえよりも、試合会場で手軽に
摂取することができるサプリメントや
粉末をドリンクに混ぜて飲んだり。

そんな私が食事や食べ物と
向き合うようになったのは、
15年以上苦しんだ摂食障害から
抜け出すためでした。

よく噛む、感謝する、味わう。

この当たり前のことができるようになるまで
いったい何年かかったことでしょう。

コンビニを卒業して
サプリメントやプロテインをやめて、
自分でハーブや野菜を育ててみたり
生産者の顔が見える場所で
食べ物を買うようになりました。

最近になって、
荒川弘先生の『銀の匙 Silver Spoon』
という漫画と出合いました。

北海道の農業高校を舞台とした漫画で
豊かな自然や自給自足、動物とのふれあいなど
私が理想とする生活が描かれている一方…

日本の第一次産業の真実や過酷さ、
屠殺して加工して販売して自分でも食す、
動物の命をいただく過程なども
知ることができる貴重な漫画です。

現代日本では、自分で動物を殺めることなく
食べやすいようにカットされた肉を
簡単に誰でも購入することができます。

これがいい悪いではなく、
真実を知っているかどうかによって
食事に対する感謝の度合いも
変わってくるのではないでしょうか。

私達人間は、生かされているのです。

動物愛護の観点から
ベジタリアンやフルーティアンの方も
いらっしゃると思いますが、
野菜や果物なら搾取していいのか?

常に命をいただいていることを忘れずに
自分が生かされていることに感謝して
日々の食事を、もっと大切にしたいと思いました。

そこで始めたのが「カフェごっこ」です。

オシャレで素敵なカフェでは
よりお淑やかに、ちょっと緊張して食べる。
食事だけでなく、カトラリーや彩り、
盛り付けやお皿、雰囲気などを意識する。

毎日毎食、素敵な食事ではないけれど、
納豆ごはんや卵かけごはんの時でも
専門店に行ったかのように振舞うと
自然と食事への楽しみ方が違ってくる。

いつもと同じが、
いつもよりちょっとだけ素敵になる。

そういう感覚を大切にしています。